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「スター☆ガール」

「スター☆ガール」 (ジェリー・スピネッリ/理論社)

 YA(ヤングアダルト)に力を入れている理論社からの1冊。2000年度「全米書店員が選ぶ一番好きだった小説」に選ばれる。(日本で言えば「本屋大賞」のようなもの?!)パラマウント社による映画化決定。現在進行中。

 マイカ高校に不思議な女の子が転入してきた。スターガールと名乗るその子は、奇抜なファッションで、ウクレレをかきならしながら、ハッピーな歌をうたう。無邪気で陽気なスターガールは、いつしか校内のアイドルに。しかし、チアリーダーとして、相手のチームにまで声援をおくった事件をきっかけに、その人気は急転落。スターガールは、みんなからシカトされる。ところが、スターガールは、へこたれない。あるダンスパーティーに姿をみせたスターガールは、だれの目もきにせずひとり楽しげに踊りつづけた。その姿に男子生徒たちはパートナーをわすれて、スターガールを取り囲むのだった。 (理論社ホームページよりhttp://www.rironsha.co.jp/index.html

 男子学生”レオ”と、風変わりな転校生、自称”スター☆ガール”。そして、それを取り巻く学生達。個性のかたまりであるスターガール(以後SG)は、始め、無邪気な天使のようだと歓迎される。彼女の無垢な、しかし、普通の人から見れば破天荒な考え方は、レオにとってとても魅力的に映っていた。だが、風変わりなSGに向けられた、周りの学生達の”異端者を排斥する目”が、自分へも向けられていると知ったとたん、レオの愛情は急速に小さくなる。彼女を「普通の人」にするため、まるで赤ん坊に言葉を教えるかのように一つずつ”世間”について教えるレオだったが、最後には憎しみすら覚えて、彼女から逃げ出していくのだ。”世界を敵に回してもボクは君の見方だ”と、彼は言い切れなかった。レオを責めることのできる人は少ないだろう。なぜなら自分だって、きっと、同じことをSGにするに違いないからだ。まぶしすぎる星を前にすると、目を伏せてしまうように。SGがレオの忠告に従って、普通であろうと努力する様は、天使の羽を無理矢理ねじ伏せて服の中にしまいこむように思えて、”struggle(もがく)”という単語が頭に浮かんだ。

 「ねぇ、SG。何もかもを自分のやり方でやるっていうわけにはいかないこともあるんだよ。ずっと学校に通ったことがなかったんだから、しょうがないかもしれないけど。人は誰でも、朝起きた瞬間から、世界中の他の人たちがどう思うのかを考えながらいきているんだよ。」

 SGはある日姿を消す。しかし、彼女に関わったすべての人の心に、消えない何かを確実に残した。大人になるにつれ忘れていく(忘れていくということすら気付かない)「無垢な心」、それはSGそのものなのだ。ダンス・パーティのような日常とかけ離れた空間で、いろんなしがらみを忘れ、心の底から楽しむ…そんな時、自分の中のSGが目を覚ますのかもしれない。

 絵本「ストライプ」(デビッド・シャノン)とは、逆の観点で描かれている。「スター☆ガール」は、楽しく読める。しかし、読み終わってしばらくすると、色々な考えがぐるぐると四六時中頭をかけめぐるのだ。これほど、本を閉じて後、様々な思いに取りつかれたものは珍しい。

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