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チュウリップの幻術

「チュウリップの幻術」 (宮沢賢治・作 / 田原田鶴子・絵 / 偕成社)

………ごらんなさい。

あの花の盃の中から ぎらぎら光って すきとおる蒸気が 丁度 水へ 砂糖を溶かしたときのように ユラユラユラユラ 空へ昇って行くでしょう。………

小さな白いチュウリップからわき上がる、光の酒に酩酊して、コウモリ直しと園丁は、色めく春の幻想を見ます。………

賢治と同じ岩手出身の画家、田原田鶴子さんの絵です。地元の人が彼女の絵を見て「土地の風景そのものの匂いがする」と共感したそうです。東北の春というものがこんなに光に満ちているのかと、私は驚き、その鮮やかな美しさに胸打たれました。

賢治らしい、ややまどろっこしく、化学用語をちりばめた会話が主ですが、傘やさんと庭師の立つ庭に吹く風をあなたはきっと感じます。遠くにはまだ白く雪の残る山脈、トルコ色の空、ゆっくりと流れる雲。チュウリップをながめる傘やさんの髪がふわりと揺れたように見えるのは、私だけじゃないはず。

ゆらゆらと立ち上る陽炎を、「水へ砂糖を溶かしたときのような…」とありますが、立ち上る陽炎を「光の酒」と称して、二人は酒盛りを始めます。チュウリップの幻術に酔い、取り巻く自然をgood fellowのように感じ始めているうちにチュウリップ酒に火が入り、あたりは白い煙がたちこめて…。二人は我にかえる。

真昼の夢。DAY DREAM。あなたもこの不思議な午後を体験してみてはいかがでしょう。(子どもには少し難しいです。)美しい美しい1冊です。

田原氏は、「銀河鉄道の夜」も描いています。こちらも合わせて読んでみてくださいね。

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コメント

ほほう。
これは知りませんでした。
賢治の化学用語のちりばめられた文、大好きです。今度探してみようっと。

投稿: mikapapa | 2005年11月 6日 (日) 18:52

光と陰の描き方が秀逸です。みとれちゃうよ。傘やさん、実は好みのタイプなんです。 (*^_^*)

投稿: harry | 2005年11月 8日 (火) 15:45

こんばんは。かなりご挨拶が遅れましたがTea GardenのH2です。
賢治好きなんです。でもこういう絵本があるとは知りませんでした。私は東北の出身なので(岩手寄りの青森)、東北の春が描かれているとなると見たくてたまりません。今度探してみます!

投稿: H2 | 2005年11月23日 (水) 23:05

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