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「香水(パヒューム) ある人殺しの物語」を読んで

「香水(パヒューム) ある人殺しの物語」

    (パトリック・ジュースキント:著 池内紀:訳 文春文庫)

読みました。

長男につき合ってYAばかり読んでいた私なので、この世界観に入り込むのに少し時間がかかりました。

YAは、”揺れ動く若者の心理”を追っているものが多く、また、興味をひくために”事件”がたくさん用意されています。

しかし、この「香水」は、ある男の一生を描いたもの。説明的な文章が多いのです。

こういうタイプの文章に慣れていない長男は、手にして2,3日読んでいたものの、「これさぁ、オレ苦手。よくわからない。」と言って、返してきました。

そうかもしれない。「どうなる?どうなる?」って気ばかり先走ってしまうストーリーの方が小中学生にはウケますからね。本を買ってもらうべく、出版社側もリサーチをしているはず。企画するはず。

                    *****

でも、慣れてくれば、この本の凄さに気付くでしょう。

ていねいにていねいに読んでいけばいくほど、描写の巧みさを味わうことが出来ると思いました。

【この世に痕跡一つ残さずに消え失せるもの、すなわち香りというつかのまの王国】

天才的な嗅覚を持った男、グルヌイユ。

一度かいだ匂いは忘れない。そしてその匂いを正確に再現できる。

                *****

視覚で表現できない「嗅覚」を、この本は見事に文章化しています。かといって、本をよみながら、「なるほど、この匂い、わかるわかる!」といった身軽な感想を持つのではなく、

パリの街、グルヌイユの歩く周りの空気、人々の吐く息などが、読み進むうちにいつのまにか、自分を包むかのように漂ってくる。

どんな場所でこの本を読んでいようと、自分の周りに何㎝かの空気の層ができたかのように、匂いがまとわりつく。

                    ****

天才的な嗅覚を持った男、グルヌイユには、体臭がない

体臭がないということがどんなことか、みなさんわかりますか?

<気配がない>ということなんです。

天才グルヌイユは、体臭がないせいで、自分が人から隔離されている(心にとめてもらえない、すなわち孤独である)と、いつも寂しさをかかえ生きているのです。

彼は、あらゆる匂いを作り出すことができました。もちろん、彼に欠けているもの、すなわち<体臭>ですらも。

 無個性という個性、日常用、

 粗野な印象を与える匂い、凶暴な匂い。

 同情・憐憫用の匂い(これは少しミルクがかった、すがすがしい若木の匂い)

 母性本能をくすぐる匂い、

 どうしても一人でいたい時の匂い(起き抜けの口臭に似ている匂い)

いろいろな場面で、さまざまな<体臭>を使い分けて生きていくグルヌイユ。

「世界はオレの意のままだ。国王だって自分の前にひざまづかせることさえ出来るだろう」

しかし、それは所詮身にまとうだけのもの。本物ではない…この焦り、哀しみが「黒い霧」のようになって、ときおり彼を襲うのです。

                    *****

そんなある日、出合ってしまった。至高の香りに…。すなわち若き乙女の香りに。

ある一人の少女の匂いに虜になったグルヌイユは、少女が乙女へ成長するまで待ち続けます。匂いの束のなかにまじった「一本の金線」。成熟する前の乙女の香り。その前にひれふしてしまいそうなくらい美しく、物狂おしく、欲してやまない気持ちにさせられる。

…どうしてもあの匂いを自分のものにしたい…

人間から体臭を抽出する実験をかさね、ついに成功した日。それはグルヌイユの狂気の始まりの日でもありました。

24人の少女を殺し、25人目。そう成長を待ち続けたあの少女、今や誰もが振り向く清潔な乙女となった【ロール】という名の少女こそ、グルヌイユの香水の最後の仕上げの材料。

そしてついに念願の香水が出来上がります。小瓶に満たされた禁断のパヒュームを抱きしめるグルヌイユ。

至福の時間は長くは続かず、まもなくグルヌイユは少女殺しの犯人として捕まってしまいます。そして死刑の判決を受けるのですが…。

衝撃のラスト。

ここで話すわけにはいきません <(_ _)>

                    *****

匂い。

ふとかいだことのある懐かしい匂い。

たとえば、おばあちゃんちのたんすににおい。新しいカーテンのにおい。

「時をかける少女」ではラベンダーがキーとなっていましたね。

あなたの匂いにまつわるエピソード、よかったら聞かせてください。                    

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コメント

今もあるのかな。資生堂のタクティクスの匂いを嗅ぐとドキドキしたのを覚えています。主人がデートの時にいつも付けていたから。(えっちな話では無いですよ。笑)ドキドキするときにずっと嗅いでいたから、嗅ぐとドキドキするようになってしまったらしい。 今、また嗅ぐことがあったら、ドキドキしちゃうのかな。ちょっとやってみたいです。笑

投稿: かな | 2007年1月26日 (金) 00:22

かなちゃん。おいでませ。
「主人」が誰だかわかってるから、読みながら顔がニヤニヤしてしまって…。(またシワがふえるじゃん!!)
へぇ、そうだったんだ。そーだったんだ。
そういえば、なおみちゃんとかなちゃんから、
「アナイスアナイス」もらったっけ。
あのときはどうもありがとう。

投稿: harry | 2007年1月26日 (金) 15:15

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